粒界腐食
技術の森貞です。
今回は、粒界腐食について少し書きたいと思います。
Cr(クロム)はC(カーボン)と結合しやすい性質を持っているために高温に加熱さ
れるとCr炭化物が結晶の粒界に析出します。そのためこのCr炭化物の周りはCrが足り
ない状態になり、環境によっては腐食されます。これが粒界腐食(ウェルドディケイ)です。 またCr炭化物が生成して粒界腐食感受性が生じること(流会腐食がおきやすい状況)を鋭敏化といい、Cr炭化物が形成されやすい550~800℃間で保持するか、この温度域を徐冷すると鋭敏化が起きます。
オーステナイトステンレス鋼の溶接熱影響部は、約1000℃以上に加熱された粗粒域の
溶体化部と500~850℃程度に加熱された炭化析出部とに分けられますが、炭化析出部
の方で粒界腐食が起きます。
粒界腐食の防止には、低炭素鋼(SUS304L・SUS306L)または安定化鋼(SUS321・SUS347)を使用するのが有効です。 私は共金系のローカーボンステンレスを良く使います。
施工面からでは、入熱量を小さくし冷やしながら溶接するなどし、鋭敏化温度域(500~850℃)の冷却速度を速くすることが良いと思います。オーステナイト系ステンレスを溶接するときの基本です。 溶接後、固溶化熱処理を行うのも有効だと思います。
SUS321やSUS347などの安定化ステンレス鋼を溶接すると、溶体化部でTi炭化物やNb炭化物が再固溶し、その後の溶接熱などで600~650℃に加熱されるとCr炭化物が析出
し、腐食環境で粒界腐食が発生しやすくなります。これをナイフラインアタックといい、
その防止には、もう一度Ti炭化物やNb炭化物形成するように、溶接後870~900℃で安定化処理を行うことが有効です。
粒界腐食に関してつらつらと書きましたが、残念?幸い?ながら粒界腐食が起こったところを見たことがありません。 そうそう粒界腐食が起こっても困りますが、もし遭遇するようなことがあれば写真でもつけて報告したいと思います。
それではまた。