コバール板巻溶接パイプ【t0.2×φ60×95L】
弊社では、展示会用に板巻溶接パイプ(サイズ:t0.2×φ60×95L)を溶接可能材質にて製作しております。
現在は下記の材質を製作しております。
タンタル・ニオブ・チタン・ニッケル・銅
インコネル・ハステロイを主としたニッケル基系合金
SUS304・SUS316Lなどのオーステナイト系ステンレス
上記以外にも溶接可能な材質もあり、フィードスルー(ハーメチックシール、電流導入端子)の溶接のご依頼をよくいただきますので、この度コバールを追加することになりました。
作業者の感想
初めて溶接する材質でしたので、熱伝導率を参考にし、必要な入熱量を考えたうえで溶接条件を決めました。
若干、溶接ビード表面にスケールが目立つように感じたので、さらに条件を微調整していきました。
結果として、普段溶接しているSUS304と同じような、綺麗な溶接ビードになり、良かったです。
溶接後のロール成形も、SUS304パイプと同様な仕上がりになり、ロール成形性は良い印象を受けました。
上記のような様々なデータが得られたので、似た材質の材料を溶接する際に活かしていきたいと思います。
製造部:山口
コバールについて
コバール(Kovar)の特徴
コバール(Kovar)は鉄にニッケル、コバルト[1]を配合した合金で、常温付近での熱膨張率[2]が金属のなかで低く、硬質ガラスと似た熱膨張係数を持っています。
機械的変形に対して不安定で熱膨張係数が変化したりするため、取り扱いには慎重な注意が必要です。使用前に熱処理を行うと良いそうです。
また加工硬化が生じやすく、熱伝導率が低く、粘り気があるため、切削加工が非常に難しい材料で難削材に分類されており、加工の際には注意する必要があります。
コバールはCarpenter Technology Corporation社の登録商標ですが、ニッケル合金の一種として一般名詞のように使われております。
コバールの化学的成分(重量%)
Ni 29%、Co 17%、Si 0.2%、Mn 0.3%、Fe 53.5%
コバールの物理的性質
密度:8.25-8.60 g/cm³
熱膨張係数:5.1-6.2×10/K(20~500℃)
熱伝導率:16.7-17.3 W/(m・K)
ヤング率:138-207 GPa
コバールの用途
電子部品関連では、ICリードフレーム・トランジスタのリードキャップ・高出力通信管部品・水晶振動ケースなど
硬質ガラス封着では、硬質ガラスやセラミックとの封着に適しており、光通信関連部品や真空管関連部品などにも多く使用されております。
また、金属とガラスを気密封止するには、金属とガラスの熱膨張係数が同じであることが必要ですが、
コバールは常温付近での熱膨張率が低く、硬質ガラスに近いという特性があるため、それにあてはまりますので
異種材を組み合わせた部品の接合部材として最適な材料と思われます。
[1]コバルト
コバルト(cobalt)は、原子番号27の元素で、元素記号はCo。純粋なものは銀白色の金属です。
常温で安定な結晶構造は六方最密充填構造で、420 °C以上で面心立方構造に転移します。
鉄族元素であり、強磁性体でもあります。鉄より酸化されにくく、酸や塩基にも強い。キュリー点は1150 °Cです。
コバルト化合物は青いことが多いため”コバルト”の名称だけで青色を指すことも多くあります。
[2]熱膨張率
熱膨張率とは、物質が温度変化によって膨張する割合を、温度当たりで示した値で、熱膨張係数とも呼ばれます。
熱膨張率は、単位温度変化当たりの長さ変化率(線膨張率)と単位温度当たりの体積変化率(体積膨張率)の2種類があります。気体と液体については体膨張率のみ、固体については体積膨張率と線膨張率が定義できます。
管理番号:241225